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日々の「これ、いいな」をシェアしたい私の備忘録

時代は「サステナビリティ」のその先へ  世界で関心が高まる「リジェネレーション」とは?

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 先週SB University 事前研修というものに参加してきました。そこで学んだ「Regeneration(リジェネレーション)」という言葉にとても考えさせられたのでメモします。


サステナブル・ブランドとは

 まず今回の学びのきっかけとなった「SB University」及びサステナブル・ブランドについてご紹介します。

 

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サステナビリティ」に特化した民間コミュニティ

 「サステナブル・ブランド(以下 SB)」とは、経営の軸に「サステナビリティ(持続可能性)」を取り入れ、自社の競争力とブランド価値を高める民間主体の活動で、2006年にアメリカで始まりました。この趣旨に基いて多くの企業関係者や識者、教育者、学生などが参加・議論する「サステナブル・ブランド国際会議」が世界13ヵ国14都で開催されており、日本では第5回目の開催となる「サステナブル・ブランド国際会議 2021 横浜」が2021年2月24日・25日に開催されます。


SB University

 SB Universityは大学生をSB国際会議に招待し学びの場を提供するもので、スポンサーの大和ハウス工業さんが支援してくださっています。私は今回幸運にも参加させていただけることとなり、今年の「サステナブル・ブランド国際会議 2021」のテーマが「WE ARE REGENERATION」ということで、その事前知識の導入として講義を受けたのでした。
以下では今回ご登壇いただいた株式会社SYSTEMATIC CHANGEの東 嗣了さんのお話のメモを元にお伝えします。

 

サステナビリティ」の先の「リジェネレーション」

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講義のメモ
サステナビリティ」だけでは不十分?

 これまで世界では”Sustainability(サステナビリティ)”を重視した取り組みが推進されてきました。SDGsが世界の指標となり、各国で「将来世代のニーズに応える能力を損ねることなく、現代世代のニーズを満たす」持続可能な発展を目指しています。
 しかしSustainabilityの概念は地球に対するネガティブな影響を減らすことが中心。すなわち「CO₂の排出量削減」や「廃棄物削減」のように”Less Bad”を目指すものですが、それだけでは解決できないほど地球の課題は深刻化してしまいました。そこで新たに注目されるようになったのが”Regeneration(リジェネレーション)”という概念です。
 一般的に「再生」などと訳される「Regeneration」。これは地球システム全体に付加価値が生まれる仕組みを追求して再生的な状態をつくり出すことを意味しており、地球の一部である人間が地球と共に繁栄していく、という発想です。すなわち現状維持だけでなく、プラスの側面を生み出す”More Good”を目指すものだと言えます。

 

事例紹介:日本で初めてASC認証を取得した「南三陸戸倉っこかき」

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海さ、ございん HPより

 東さんにお話しいただいた宮城県漁業 戸倉出張所の「南三陸戸倉っこかき」の事例をご紹介します。
 宮城県南三陸町は2011年の東日本大震災で大きな被害を受け、町を支えていた漁業も壊滅的な被害を受けました。そして震災後の復興にあたり多くの事業者が震災前の状態を取り戻そうとする中で、従来の大量生産の養殖方法を改め、養殖棚を3分の1に減らす方法を試みたのが戸倉出張所の方々でした。
 震災前の方法では過密状態で栽培していたため、生育に時間がかかり、且つ品質が悪い→単価が低いので量を確保しようとさらに過密にする→品質が下がる、という負のループに陥っていました。しかし戸倉出張所の後藤さんは、震災を通して自然をコントロールするのではなく「自然と共に生きていくことこそが最善」と気づいたといいます(アミタホールディングス株式会社,2016/09/15)。
 この取り組みの結果、高品質なカキの生産に成功し、また1度の生育に3年かかっていたものが1年で出荷できるように改善されました。また生産量・生産金額共に増加し、海の環境も改善され、地域経済・地域環境双方の改善にも貢献。この成果が評価され、戸倉出張所は2016年3月に国際的な環境認証であるASC養殖場認証を日本で初めて取得しています。

従来の状態を維持するだけではなく「自然と共に社会もより良い方向に変化」した素晴らしい取り組みだと思いました。

 

他業界でも広がる「Regeneration」

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 今回ご紹介したのは漁業でしたが、実はこの「リジェネレーション」というに注目し、既に取り入れ始めている/取り入れようとしている業界も多くあります。例えばアパレル大手のPatagoniaは2017年に他者企業と協力してリジェネラティブ・オーガニック認証を制定し、アパレルブランドでありながらリジェネラティブ農業に力を入れています。
 また観光業界でも、インバウンド情報に特化したメディア「やまとごころ」代表の村山慶輔氏が2020年に出版した著書「観光再生」において今後の観光では「環境を良くする」観光である「リジェネラティブ・トラベル」が重要だと主張し、注目されています。
(これらについても今後詳しくご紹介できばと思います)
 日本ではまだ言葉としては注目され始めたところですが、今後SDGsのように広がっていくのではないかと思います。 

 

まとめ 今後注目!リジェネレーション

 今回の講義で、今度はサステナビリティも大切な概念である一方で、さらにリジェネレーションを追求しなければならない時代なのだと感じました。まだ勉強したてなので、今後理解を深めていきたいと思います!来月24日・25日の会議当日の学びもまたレポートできればと思います。
 みなさんも”サステナビリティ”に加えて、今後は”リジェネレーション”というキーワードにも着目してみてはいかがでしょうか?
それでは!

 

【参考資料】
・Sustainable Brands:https://sustainablebrands.com/
サステナブル・ブランド・ジャパン:https://www.sustainablebrands.jp/
アミタホールディングス (2019/04/16更新)「『日本初!ASC養殖場認証取得』の経済・環境・社会における効果」https://www.amita-oshiete.jp/column/entry/015301.php
・海さ、ございん 「『南三陸戸倉っこかき』と『ASC認証』」:https://umisagozain.com/asc/
・Patagonia リジェネラティブ・オーガニック認証 :https://www.patagonia.jp/blog/2018/05/regenerative-organic-certification-unveiled/
・Patagonia リジェネラティブ・オーガニック農業:
https://www.patagoniaprovisions.jp/pages/why-regenerative-organic
村山慶輔(2020)「観光再生」,プレジデント社

・やまとごころ(2020/11/16) 「withコロナの観光業を救う10のキーワード」https://www.yamatogokoro.jp/column/withcorona_10keywords/40813/